緊急地震速報 PLUM法での予報開始について
平成28年後半(予定)より、気象庁 緊急地震速報の震度予測方法が大きく変わります。
これを受けまして、技術的内容に関する事項を私なりにまとめてみました。
【新たに導入される震度予測方法 PLUM法とは?】
従来の手法は、初めにP波(初期微動)から『震源の緯度経度・深さ・地震の規模』を予測します。
続いて、予測したデータに基づいて各地の震度を計算します。
予測したデータに誤差がある場合、過大・過小評価となるのが欠点です。
新しく導入されるPLUM法は、震源を推定せずに震度を予測する全く新しい手法です。
予想したい地点の半径30km範囲内のリアルタイム震度に基づいて震度を計算します。
S波(主要動)を観測してから計算を行うため、猶予時間が最大で約10秒と短いのが欠点です。
全国各地点で揺れる直前に発令されるため、地震速報や津波・大津波警報より後に発令されるケースも考えられます。
【なぜPLUM法を導入するのか?】
PLUM法を導入することによって、今まで技術的に難しかった緊急地震速報の発令が可能となります。
・巨大地震発生時、広範囲に緊急地震速報を発令することが可能になる。
→従来の手法では、規模の大きい地震を短時間で解析することが難しく、過小評価となるため。
・震源の深さが150km以上となる場合においても、緊急地震速報を発令することが可能になる。
→従来の手法では、精度の問題で震度予測が難しかったため。
・震度4以上を観測したが、緊急地震速報を発令できなかったケースを減らすことが可能になる。
→PLUM法ではリアルタイム震度を用いるので、震度4を観測した時点で緊急地震速報を発令することが可能となるため。
・推定した震源が信頼できないデータである場合、従来の方式で震度予測を行わないことによって、誤報・過大評価による警報発令を回避することが可能になる。
→PLUM法での震度予測に切り替え、信頼できない震源データを破棄することが可能になるため。
・震源が推定できない場合においても、緊急地震速報を発令することが可能になる。
→PLUM法での震度予測は震源を推定する必要がないため。
従来の手法・PLUM法にはそれぞれの利点・欠点が存在し、PLUM法は『従来の手法の欠点を補う』位置づけで導入されます。
また、従来の手法とPLUM法を統合したハイブリッド法での震度予測も導入されます。
これは、震度を従来の手法とPLUM法の両方で予測し、各地点ごとに大きかったほうの震度をそれぞれ採用するものです。
状況によりこれらの手法を使い分け、緊急地震速報を発令します。
【杏システムの対応について】
PLUM法はリアルタイム震度を用いるため、気象庁以外の第三者が震度計算を行うことができません。
これに基づき、気象庁から『新規予報資料』が配信されます。『新規予報資料』には全国の観測点に対して発令する、すべての緊急地震速報が含まれています。
現時点では『新規予報資料』の入手が困難であるため、杏システムからPLUM法の震度予測を発表することができません。
杏システムでは従来の手法を用いた震度予測のみを行います。
従って、杏システムの処理対象となる緊急地震速報を以下の通り変更します。
(変更前)
@eewbotがツイートした緊急地震速報のうち、震度予測が可能なデータおよびキャンセル報
※訓練データは対象外
(変更後)
@eewbotがツイートした緊急地震速報のうち、PLUM法予報データを除いた震度予測が可能なデータおよびキャンセル報
※訓練データは対象外
また、気象庁がハイブリッド法を用いて緊急地震速報を発令した場合、一部の地域においてPLUM法での予測震度が採用される場合があります。
この場合でも、杏システムでは従来の手法で震度予測を行うため、異なるデータを通知する可能性があります。
今後の運用に関して、ご理解のほどよろしくお願いいたします。