緊急地震速報が精度の改善をしたらしい。
ふとNHKニュースを見ますと、「気象庁 緊急地震速報 同時発生時の予測改善」といった記事がありました。
気象庁リンクはこちら。
【ざっくり言うとこうなる】
今回の改善点は以下の2つです。
・2つ以上の地震が同時に発生した際に1つの地震と誤って認識し、地震を過大評価してしまう問題を改善
・地震学的に異常なデータを観測した場合、そのデータを破棄
【ひとつ目の問題点】
まず初めに、地震を1つとみなして過大評価してしまう件なんですが、現行の杏システムに支障があります。
緊急地震速報は精度を補正しながら複数回送出されます。
現在の設計では『1つの地震に対して処理を行う』ように設計されており、2つ以上のデータを混同させると予期していない動作を引き起こします。
(正しく動作する例)
地震a 第1報データ 予測震度1 (震度2未満なので杏システムで発表しません)
地震a 第2報データ 予測震度2 (震度2以上なので杏システムで発表します)
~第2報データを処理したので、これから先、杏システムでは地震aのデータが破棄されます~
地震a 第3報データ 予測震度2 (震度2以上ですが、直前に地震aに関するデータを発表しているので発表しません)
(正しく動作しない例)
地震a 第1報データ 予測震度1 (震度2未満なので杏システムで発表しません)
地震a 第2報データ 予測震度2 (震度2以上なので杏システムで発表します)
~第2報データを処理したので、これから先、杏システムでは地震aのデータが破棄される予定~
地震b 第1報データ 予測震度3 (新しい地震なので発表されます)
~第1報データを処理したので、これから先、杏システムでは地震bのデータが破棄される予定~
地震a 第3報データ 予測震度2 (新しい地震とみなして、再度発表されます)
~これがループすると、全てのデータが通知され、非常にうるさいことになります~
【ひとつ目の問題点 まとめ】
非常に難しい話ですが、通知に支障があるわけではありません。
通知数が非常に多くなるため、必要な情報が取り出しづらくなります。
限りなくシンプルな緊急地震速報サービス展開を目標としているため、ポリシーに反する内容は改善が必要なのではないかと現在修正を検討しているところです。
【ふたつ目の問題点】
次に、地震学的に異常なデータを観測した場合にデータを破棄する件ですが、ただ単に破棄するだけではないようです。
地震学的にあり得る、良質なデータを得られた場合は、高度利用者向け緊急地震速報で”緊急地震速報 予報”として発表されます。
そもそも、メディアが取り扱う緊急地震速報とは”緊急地震速報 警報”と呼ばれるもので
・2つ以上の観測点で良質なデータを得られた場合
・それでいて、相当な揺れが見込まれる場合
の条件を満たしていないと発令されません。
よって、データが良質なものであれば、たとえ1つの地点でしか観測できていなくても杏システムでは発表が行われます。
さらに、その送出データには”マグニチュード7を上限とする”と制限設けているようです。
逆に言ってしまえば、
場所によっては杏システムで震度3程度で予測したものが、緊急地震速報 警報となり、データが大幅に修正される可能性も否定できないことになります。
(想定される例)
緊急地震速報 第1報 予報
・電文種別コード:36(B-Δまたはテリトリー法(1点))
・マグニチュード:7(上限値)
・推定震度:3
緊急地震速報 第2報 警報
・電文種別コード:37(グリッドサーチまたはEPOSなど、その他の複数点データを用いた解析)
・マグニチュード:9.1(大幅修正)
・推定震度:5強
このように、震度3→5強と補正された場合、杏システムでは震度3の通知しか行いません。
(※震度6弱以上に補正されると、緊急アラートが機能します。再度通知が行われます。)
【ふたつ目の問題点 まとめ】
この問題を改修するには緊急地震速報 予報・警報で大きくマグニチュードが異なる場合には、再度処理を行うなどのアルゴリズム変更を行う必要があります。
しかし、震度5強では死亡率も比較的高くないため、改善するかどうかは今後検討する予定です。
【まとめ】
上記のような問題が発生するのが目に見えているので早めに改善したいのですが、現在のアルゴリズムにルールを追加するのは難解化の原因となるため、避けたいのが実情です。
今後、運用上問題がない程度には改善を行います。
問題が発生した場合、大目に見ていただければ幸いです。
以上で雑記とさせていただきます。